飲酒欲求が出たらアル中のドキュメンタリー「ガード下酔いどれ人生」を観よう
皆さんは日曜日の午後2時から放送されている、フジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」をご覧になったことはありますか?
どの放送を観てもリアルな人間模様が描かれていて私の心を惹きつけます。
その中でも特に印象深い放送がありました。
私たちアルコール依存症には他人事とは思えない内容です。
それが今日、ご紹介したいノンフィクション「ガード下酔いどれ人生」。
まだ観たことがない人もぜひ、ご覧くださいね♪
目次
飲酒欲求が出たら「ガード下酔いどれ人生」を観よう
飲酒欲求が出たらこれを観ると飲みたくなくなりますよ(笑)
決して他人事ではない、自分だってわからないんだから。
(記事に動画を貼ろうとしたら無効になってしまうので観たい方はYouTubeからご覧ください)
登場人物
私がこの動画を初めて観たのは、アルコール専門クリニックでのデイケアのプログラムのひとつ【ビデオ鑑賞】の時間でした。
この動画には主に三人の登場人物がいます。
まずはバリバリのアル中、吉雄さん(当時46歳)、吉雄の母トシさん(当時79歳)、小林さん(当時50歳)です。
当時と書いてあるのは、この「ガード下酔いどれ人生」の動画は数年に渡って何回か放送されているからです。
ニートの息子吉雄さんと母親トシさんの関係
吉雄さんは喘息持ちで高校時代にいじめを受け、その後も仕事にも恵まれず挫折した人生を送っています。
この動画が放送された当時の吉雄さんの年齢は46歳、その5年程前は働いていたようです。
ところが、その5年程前を境に不況の波に押しつぶされて職を失い酒に溺れてしまう生活に。
その後の詳細はわかりませんが、そんな息子が不憫なのか母親トシさんはアル中の息子に代わって生計を立てていました。
二人の生活はトシさんが受ける二月24万円の年金で賄っていたのです。
しかも、そのほとんどが息子の酒代に変わると言います。
もう来年80歳だという高齢の母親に酒代をねだる息子。
外出するのは酒を買いに出るときだけ、典型的なアル中です。
酒代をねだる姿はまるで小学生のようだと言っています。
ご主人を早くに肝硬変で亡くしたため働きづめだったトシさん。
朝から晩まで働いていたので息子に構う暇がなかったことを悔やんでいます。
高齢にもかかわらず気丈に振る舞うトシさんですが、息子がなんでこんなアル中になんかなってしまったのかと自分を責めているようです。
そんな思いからなのか、ついつい吉雄さんに酒代を渡してしまう年老いた母親のほうが不憫でたまりません。
小林さんの存在
小林さんは吉雄さん親子の酒飲み友達でもありました。
小林さん自身もお酒で苦い経験をしていることで、どうにか吉雄さんを立ち直らせようと何かと世話を焼いてくれるのです。
まるで吉雄さんの兄貴分みたいな小林さん。
若い頃は羽振りの良かった小林さんもまた、不況の波に押されて持っていた工場も手放しお酒に明け暮れていたと言います。
そして、幸せな家庭生活も失い、身体も壊しています。
それでも、お酒をやめることができずついには食道ガンに侵されてしまうのです。
アル中が「ガード下酔いどれ人生」を観た感想
先述にあるように私はこの動画をアルコール専門クリニックで初めて観ました。
最後まで観た感想は「あまりにも虚しく切ない...。これがアルコール依存症の現実なのだろうか。」
そしてこうも思ったのです、「私はこんなにひどくない。」と...。
アルコール依存症という病気を知らない
この番組が放送された1999年頃はまだアルコール依存症が病気だという認識も低く
ましてや高齢のトシさんがアルコール依存症について知る由もなかったでしょう。
私には、トシさんが息子のお酒をやめさせることよりも、仕事に就いてほしいと願っていることのほうが強いと感じました。
自分の年齢を考えると一刻も早い自立を目指して欲しかったのでしょう。
無理もありません。
しかし、お酒をやめることの難しさやお酒による身体的、精神的なダメージなどもわかる術がなかったのだと思います。
そして、小林さんもアルコール依存症についての知識はなかったようです。
ただお酒の飲みすぎは身体によくないということだけは理解していた。
小林さんもトシさんも「少しは酒を控えて働くことを考えろ」みたいなことはよく言っています。
「酒をやめて云々」という言葉は聞けましたがただ「やめろやめろ」ではやめられないことは知らないのです。
動画中、一度もアル中・アルコール依存症という言葉を聞かなかったと思います。
三人でお酒を飲むシーンもあって、見方によっては三人ともアル中さんに見えたのは私だけでしょうか。
やっと働く決心をするものの
シーンの中で小林さんが食道がんになり手術後、お見舞いに行く吉雄さん親子。
小林さんを見舞うはずが反対に小林さんに説教され励まされた吉雄さん。
何かを感じ働く決心をし職探しをします。
しかし、決心の甲斐も虚しくすぐに元の木阿弥になってしまう吉雄さん。
働き先の仕事がやはり不況の煽りを受けてしまったようです。
そこへ、食道ガンの経過も良くなり退院した小林さんが吉雄さんの様子を見に行くのですが
そこには泥酔した吉雄さんの姿が...。
呆れた小林さんはしばらく二人の前に顔を見せませんでした。
無理もありません、あれだけ心配して意見をしたのですから、堪忍袋の緒が切れてしまったのでしょう。
すると、今度は母親のトシさんが肺炎一歩前までに体調を崩してしまっていたのです。
番組スタッフが病院に連れて行き難を逃れましたが、初めて自分の置かれている状況に気がつく吉雄さんは困惑してしまいます。
それはそうです、今まで何をやるにも小林さんや母親の手を借りないとできなかったのですから。
そして再び決意するのです。
「このままではいけない、酒をやめて働かなくちゃいけない」と。
今回お世話になるのは前回、途中でやめてしまった仕事と同じ警備会社のようです。
その警備会社の社長、田中さんは吉雄さんのような弱い人を支援してくれるとても人情深い人でした。
吉雄さんがお酒に溺れてまともに働けないことも、きっと続かないことも承知の上のようです。
仕事は工事現場などの警備。
自宅から現場までは遠いと寮まで世話をしてくれます。
吉雄さんの純粋な心と善良さを買ったという社長さん。
人として一番大切なものを持っているから十分やっていけると言います。
私個人としては、この考え方は素晴らしいと思いますが、それを平気で裏切るのもアル中です。
ピュアな心だけではお酒はやめられないのです。
寮に入ればお酒を飲むことも控えるだろうし、交通費も浮くと吉雄さんに自立を促します。
吉雄さんは「長続く続かないと悪いから。」と社長さんの提案を申し訳なく思っているようです。
すると社長さんは「今からそんなこと言わないで自分の意思だよ、大いに恥をかいて大いに人に迷惑をかける生き方をしたほうがいいと思うよ。」と励まします。
この言葉は私にとっても印象的でした。
そうだ、私も人前で恥をかくこと、迷惑をかけることを必要以上に避けているのではないだろうか...と。
吉雄さんも人の本当の温もりを感じ、これまでの自分を反省したようです。
母親の入院という形で初めて自分の置かれてる立場を知る吉雄さんですが、今後どうなるのでしょう、詳細はわかりません。
一方、食道のガン手術からお酒は控えている小林さん。
家族と離れて暮らしていますが、奥さんとは離婚はしていませんでした。
お酒を飲まなければ良い人だというのは本当のようです。
食道ガンをきっかけに家族との距離が縮まったのか、奥さんやお孫さん達とも度々会うことができるようになりました。
お酒で失ったものを取り戻すためには、やっぱりお酒をやめることしかないのだなと実感します。
4年後の吉雄さん
吉雄さんの父親、長吉さんは若くして肝硬変を患い亡くなっています。
肝硬変といえば想像できるのは酒の飲みすぎです。
吉雄さんがアル中になってしまったのは父親の影響もあったのでしょうか。
吉雄さん享年50歳。
不思議なのはあれ程お酒に溺れていたのに働こうと思ったらすぐに働きに行けたことです。
身体は壊していなかったのでしょうか。
食欲があまりなかったようにも見えませんでした。
でもそれは、画面上でのこと。
アルコール依存症の平均寿命52.5歳をわずかに下回る年齢50歳でこの世を去っていました。
老いた母親はあれ程息子の酒に苦しめられたのに、息子の死を受け止められないようです。
人生が上手くいかないからとお酒に逃げた息子、そんな息子が不憫でたまらない母親は共依存していたのでしょう。
しかし、年老いた母親には手の打ちようがなかったのも事実です。
私もお酒がひどい時に父親が
「なんで○○はあんなになっちゃったんだろうな、なんであんなに酒を飲むようになっちゃったんだろうな。」と嘆いていたと聞いたことがあります。
勝手にアルコール依存症になっておいて無責任な意見ですが、アルコール依存症は病気です。
もし、家族や友達、知人がお酒がやめられなくて困っていたら相談窓口があるので相談してください。
また、生活が苦しくてアルコール依存症の治療が難しいとお考えの方はこちらの記事を参考にしてくださいね▼
お金がなくても大丈夫!アルコール依存症の治療は生活保護受給者でも受けられる
吉雄さん親子も、このような手段があることを知っていたらもう少し早く改善できたかもしれません。
そして、小林さんのような人がアルコール依存症について詳しければきっと吉雄さんを医療機関につなげてくれたのではと思ってしまいます。
私は、このドキュメンタリーで虚しさや切なさを感じましたが、やがてそれが悔しさに代わり断酒できています。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
皆さまの精神と身体の健康を心からお祈り申し上げます。
webライターもやっています!